
何びとも、実際、たとえ他のあらゆる善きものを所有するひとであっても、親愛なひとびと( フィロイ)なくしては生きることを選ばないであろ う。
※高田 三郎. アリストテレス ニコマコス倫理学 下 (岩波文庫) (p.79). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
私はアリストテレスの本の中でこの文章が一番好きだ。50歳の私の座右の書だ。
初めてこの文章を読んだのは、37歳の時だった。
何故印象に残ったかを考えてみた。
独身だった32歳の時に、仕事の関係で、地元から遠く離れた地方に転勤して、一人暮らしをしていた。仕事は楽しく、やりがいもあった。会社の先輩や同僚、協力会社の人も良い人ばかりだった。会社員としては、幸せだと思う。
しかし、暮らしていたアパートに帰ると、誰も話し相手がいない。
夜ご飯も一人で食べる。
休みの日も一人で過ごす。年に何度かある、大型連休の時に実家に帰り、祖母や両親、弟、友人と過ごすことが、心から楽しかった。
そんな生活が4年ほど続き、深刻に悩んでしまった。
私は寂しさに耐えられず、もう地元に帰ろうと思い、会社を退職しようと考えた。
極端な考え方だが、何のために自分は生きてるのか、分からなくなっていた。
そんな時に今の妻と出会うことができた。
お互い年齢も36歳だったので、すぐに結婚した。
その後、人生が一変した。
家に帰って、話しができる人がいるだけで、何と楽しく、幸せなのだろう。
私は一人で生きていくのは、本当につまらないと思った。
そして、同時に、寂しさに負ける自分の性格が情けないと思っていた。
しかし、結婚後に、たまたまアリストテレスのニコマコス倫理学を読んだ。
“親愛な人びとなくしては、生きることを選ばない"という文章を読み、心から共感した。
私はその日以来、この文章をいつも思い出すようにしている。
例えば、妻や息子に不満を持っても自分に言い聞かせる。
“お前はどんなに偉そうに、腹を立てたり,不満を持っても、彼らがいないと生きることを選ばないだろう。周りに彼らがいてくれるのを感謝しろ。"
そう言い聞かせると、妻と息子に心から感謝できる。
私は過去の経験から、一人で生きていく寂しさと、自分がそれに耐えられないことを知っている。
だからこそ、妻がいてくれることに感謝している。
そして、いつもそのことを思い出し、妻に感謝を忘れないようにしようと思う。
さあ、明日も仕事だ。頑張ろう。